丹波立杭焼 市野 秀之

コロナ禍でこの伝統産業も様々打撃を受けたと思いますが、実際コロナでどれほどの影響を受けましたか?

窯元によっても違うとは思いますが、僕らはほとんどコロナの影響を受けなかったですね。むしろ売り上げが上がった時もありました。何故かというと、コロナ明けに新しい飲食店を開店したいという方がこのコロナ禍のうちに準備しておこうということで食器類をたくさん僕のところに注文しに来たからなんです。雅峰窯は家族で経営しているのでそこまで生産量が多くなくお客さんを逃がしてしまっている状態だったので、このコロナ禍の十分な時間でしっかりとお客さんの注文に答えることが出来たんですね。

このように丹波焼の窯元は家業でやられているところがほとんどなので、その窯元の生産量がその家庭の大きさにとても関係してしまいます。なので窯元によっては、後継者がおらず高齢の方が一人で細々とやってしまっているというのが現状です。僕達もその生産量の向上ということについては一つの解決のしなければならない課題でもあります。

そういった家業でやられている窯元がほとんどいうことですが、生産量を上げる為にスタッフの雇用などをしている窯元はあるんでしょうか。

ほとんどないですね。僕達の業界というのは他と違って、死に物狂いでやらないとそこそこの生活も成り立たない仕事なんです。商品の単価を上げる為には自分の名前も売らなければいけないし、生活する為にはしっかりと商品を作って販売しなければならない、このバランスを保てている窯元が50件のうち何件あるのか。その状況でスタッフを雇ってしまうと人件費の負担がしんどくなってしまうので家内工業で細々とやるところが多いんです。

そのような現状の中でこの丹波立杭焼は数年後、数十年後どのようになっていくと思いますか?

僕らの世代っていうのは経験者がものを言って経験値は少ないけど発想力が豊かな子というのを潰している時代だったので、特に組織は。でも僕はそういった若い子の意見で産地を回す方が十年先に繋がると思っていますし、そこを間違えなければいくらでも発展すると思います。

商品の売り上げを伸ばす為にどのような工夫をされてきましたか?

20歳30歳の頃は商品自体が物を言うという強気な考え方だったんですが、40歳くらいになると商品自体のストーリー性いわゆる背景も重視し始めました。こういう土地で、こういう家族構成で、こういう人がこの器を作っているという背景を含めた商売のやり方が物凄く好きなんです。その窓口の為にSNSなどを活用しています。

窯元によっては弟子などを取られたりするところもあるんですか?

数件ありますね。それこそ昔のように直談判して弟子になるケースもありますが、今は学校とのパイプがあるのでそこに求人を出して来てもらっています。そして昔では弟子の間は作品を作らせないといったことがよくあったんですが、今ではそういったことはなくなっていて、弟子ではなく若干雇用に似た形になっていますね。

地元の人同士や近縁同士で組合や産業が成り立っていると思いますが、そういった外から来た人や外部の人に対しての風当たりというものは厳しかったりしますか?

自分が組合の理事長をやっていた頃まではそこにブレーキをかけていましたね。それは何故かというと丹波焼の組合に入るということは特典ばかりなんです、事務処理や人との挨拶などのものづくりと関係のない仕事を組合がこなしたりしますからここ移り住んでその良い所だけを取ろうとする人がいたりします。だから私達は外部に対して蓋をしていました。ただ理事長を辞めてからは、方針の中で丹波焼を外にもどんどん発信しないとということでもうその殻はなくなって、そういった人たちを受け入れる為の話合いも行っています。


最後にご自身の今後の目標を教えて下さい。


器とか、丹波とか、僕だとかを介して人が繋がっていくというのが凄く好きなんです。丹波で知り合ってその人たちが色んな現場で活躍されてたり、そしてまた丹波で会いましょーとか泥臭くはありますがこの年になったらそういう繋がりっていうのを大事にしていきたいですね。


インタビュー内容を一部改変し、簡略化させて頂いています。

雅峰窯

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